いい女

Kに誓約書へ捺印させ、Kとネカフェを後にした。捺印後のKの心理状態を把握する為に、喫茶店に入り、緊張しているKをクールダウンさせる事にした。喫茶店は割と混雑していた。

Kさん?今日は遠くからありがとうございました。もう一度確認しますが、今日、頂いた誓約書は強制ではありません。理解して頂けていますよね

、、、はぁ、、強制的にではありません、、。まぁ、はい、、

Kは、なんとも歯切れの悪い口調で、そう答えてきた。私はその瞬間、こいつは、何か釈然とはしていないのだろうと感じた。誓約書に捺印はもらったが、慰謝料を回収する翌週の期日まで、安心はできない。慰謝料の支払い期日までに、こいつは最悪、弁護士でも雇って応戦してくる可能性もあるだろうとも予測もしていた。

Kさん?まぁ、今、2人で話して、この誓約書にあなたは捺印したんですから、期限までには、慰謝料をしっかりお支払いくださいね。

、、、はい。、、

Kさん?あなたを信じてない訳ではありませんが、来週の木曜日に慰謝料のお支払いの見通しについて確認をしたいので、私からご連絡しますね。頑張って用意してくださいね

、、はい、、

最後にKさん?

あんたは、ほんと最低だな?うちの妻は、あなたとFaceTimeで話すまで、不貞の事実を俺には伝えなかったぜ?

妻は2年間、俺に嘘を突き通した。それは、妻が妻自身の保身の為に嘘を突き通したのではないと私は思っている。きっと、あなたの為に嘘を突き通したんだよ。

私の妻は、ある意味、偉いと思うよ。たいした女。いい女だよ。

しかし、あんたは、いとも簡単に不貞の事実を私に自白したよな?私と会って1時間も経たない間に。

あなたは今日、俺と会うまでに妻と、様な打ち合わせをしてきたのだろう?

それにもかかわらず、あんたは、妻にだけ、嘘を突き通させ、自分はあっさり自白した!それって一体どうなんだい?

男として恥ずかしくないのか?

、、、、、

私が愛した妻が惚れた男であれば、真っ当な答えが返ってくるのでは?との、僅かな期待をしてKに問うたが、Kは答えることもできない。

そうだ。私の質問は愚問であった。Kは男しての器なんか一切持ち合わせていないクソなのだから。

もう、このクソ野郎と一緒にいる理由はなくなった。ちゃっちゃと帰す事にした。これ以上、こいつといれば、殴り倒す呵責にかられる可能性がある。喫茶店を後にして、店の前でKと別れた。

Kと別れる前に、Kと握手をした。私は笑いながら、ありったけの力を込めてKの手を握ってやった。

Kさん!お疲れ様!気をつけて帰りなよ!

Kは、深めに頭を下げると駅に歩いて行った。おそらく、Kはこれから、誓約書で禁じられている事を無視して、妻と連絡をする事だろう。Kは妻に自白しちゃってゴメンとでも伝えるのか。私にとって、どうでもいい話だが、世の中には、こんな情けない男がいるのかと同性ながら心底、落胆した。

時刻は16:30。自宅にいる妻と会う為、新幹線で向かう事にする。